�ｺ川家茂による第二次長州征討の命令

禁門の変のあとは、おとなしく幕府に従っていた長州ですが、やがて実権が下級武士にうつっていき、藩内世論も討幕派が増えていくので、当然幕府の言うことを聞かなくなってきます。そこで、将軍・家茂は、１８６５年の４月に二度目の長州征討の命令を出しました。

そのとき、もっとも家茂が頼りにしていたのは薩摩藩の軍事力だったのですが、そのころはそろそろ下級武士の連合体ができてきていたので、薩摩藩の腰は重く、１８６６年１月に薩摩連合ができあがってしまいます。ただ、薩摩連合は公にしておらず、秘密裏におこなわれていたので、当然幕府には知らせていません。

そんなことになっているとは露知らず、家茂は薩摩藩の腰の重さにしびれを切らし、１８６６年の６月に長州征討の勅許を得て実行に移します。しかし、幕府は長州藩の圧倒的な強さにあっという間にねじ伏せられてしまいました。

その直後に、総大将であった家茂が大阪城の中で病気にかかり、死んでしまいます。一般的には病死とされていますが、暗殺されたという説もささやかれています。こうして、第二次長州征討は幕府が大負けして終焉を迎えました。

最後の将軍・徳川慶喜

そんなことがあった後、１８６６年１２月に、十五代将軍として徳川（一橋）慶喜が就任しました。以前、将軍継嗣問題が起こったときに、慶喜を将軍にしようとする動きがあったことはご存知ですね。このことから分かるように、彼は非常に能力の高い将軍でした。その頃の状況をすべて把握できていたかは別として、頭の回転が速い人でした。

なので、彼にはなぜ幕府がだめになってしまったかも分かっていました。それは、朝廷や諸藩に、口を挟む隙を与えてしまったことです。それがよくわかっているからこそ、慶喜は中央集権体制を徹底しておこなおうとしました。すべてのことを幕府主導で決めていく方法で、自分でもそれができると思ったからです。

以前の家茂は擁立された将軍で、いわゆるお坊ちゃん育ちだったので、自分から政治をすすめていく人ではなく、周りの意見を聞いて、「よきにはからえ」と言っていただけでした。慶喜は当然そんな人ではありません。

慶喜は、すべて自分ですすめていこうと思っていましたが、これに一番強く反発したのが、その頃表向きにはまだ幕府に近い存在と思われていた薩摩藩でした。ペリーが来航する前の幕藩体制が、いわゆる中央集権体制です。すると、薩摩はまた以前に逆戻りで、ただの辺境の外様大名になってしまいます。なので、慶喜の唱える中央集権体制に反対したのです。

しかし、どれだけ反対されたところで、慶喜はそれをしないと幕府がつぶれてしまうと思っていたので、やり方を変えようとはしません。その結果、薩摩藩は慶喜を見限り、薩摩と長州のどちらも討幕という目標をかかげることになります。公武合体の「武」を見限ったので、「公」だけになり、薩摩も討幕の考えを持つようになったということです。